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2020年 10月 16日 【力学】2質点系の運動その2

皆さんこんにちは。

担任助手1年の中村祐貴です。

進捗いかがでしょうか。

さて,前回お届けした【力学】2質点系の運動その1取り組んでいただけましたでしょうか。
まだの方はそちらを先にどうぞ。

前回扱った弾性衝突の反発係数(はねかえり係数)が
1であることの意味について,
少し考えてみましょう。

まず,反発係数の定義は何でしたでしょうか。

 

 

 

そうですね。

 

衝突前後の相対速さの比ですね。

 

すなわち,衝突直前の物体1及び物体2の速度が\begin{align*}
v_1,v_2
\end{align*}
衝突直後の速度が\begin{align*}
{v_1}',{v_2}'
\end{align*}とすると,
衝突直前の物体1から見た物体2の相対速度\begin{align*}
v_r
\end{align*}および
衝突直後の物体1から見た物体2の相対速度\begin{align*}
{v_r}'
\end{align*}は,

\begin{eqnarray*}
v_r&=&v_2-v_1\\
{v_r}'&=&{v_2}'-{v_1}'
\end{eqnarray*}

で表されるので,
衝突前後で\begin{align*}
v_r
\end{align*}\begin{align*}
{v_r}'
\end{align*}の相対速度の符号は明らかに逆転する
(自分の視点で考えると自分に対して突っ込んできたやつは
衝突したら逆方向に飛んでいく)ため,
反発係数\begin{eqnarray*}
e
\end{eqnarray*}は次のように定義できます。

\begin{eqnarray*}
e=\textcolor[rgb]{1,0.4,0.4}{-}\frac{{v_r}'}{v_r}=\textcolor[rgb]{1,0.4,0.4}{-}\frac{{v_2}'-{v_1}'}{v_2-v_1}
\end{eqnarray*}

ここまでみてわかるように,
反発係数が1であるとは相対速さが不変で
相対速度の符号のみが変化するということです。

これは非常に重要なことなので,
しっかりと頭に入れておいてください。

ところで,この相対速度は少し別な見方をすることで
より深い考察が得られます。

それは,重心を基準に考えることです。

そもそも重心とは何だったでしょうか?
ここで2質点の運動方程式を考えてみましょう。

運動方程式は,

\begin{eqnarray*}
m_1a_1&=&F_{1,2} - F_{1,ex}~~~~\cdot\cdot\cdot(1)\\
m_2a_2&=&F_{2,1} - F_{2,ex}~~~~\cdot\cdot\cdot(2)
\end{eqnarray*}

となります。
ここに,\begin{eqnarray*}
F_{1,2}
\end{eqnarray*}は物体1が物体2から受ける内力,
同様に\begin{eqnarray*}
F_{2,1}
\end{eqnarray*}は物体2が物体1から受ける内力で
これらは作用・反作用の関係にあります。

また,\begin{eqnarray*}
F_{1,ex}
\end{eqnarray*}\begin{eqnarray*}
F_{2,ex}
\end{eqnarray*}はそれぞれ物体1や物体2が
系の外から受ける外力(external force)です。

おそらく,皆さんの多くは,でどうすんの?
と思われていることでしょう。
そもそも衝突時の内力は特に撃力とよばれる
非常に大きな力ですから,これを求めるのは難しいです。

そこで\begin{eqnarray*}
F_{1,2}
\end{eqnarray*}\begin{eqnarray*}
F_{2,1}
\end{eqnarray*}が作用・反作用の関係にあることを考えると,

\begin{eqnarray*}
F_{1,2}=-F_{2,1}
\end{eqnarray*}
が成立しているわけですから,
先ほどの2式をどうしたらよさそうですか??






そうですね。
\begin{eqnarray*}
F_{1,2}+F_{2,1}=0
\end{eqnarray*}
となるのですから,辺々足すのがよさそうですね。
(1)+(2)により,

\begin{eqnarray*}
m_1a_1 + m_2a_2 &=& F_{1,2} + F_{2,1} + F_{1,ex}+F_{2,ex}\\
m_1a_1 + m_2a_2      &=& F_{1,ex}+F_{2,ex}~~~~\cdot\cdot\cdot(3)
\end{eqnarray*}
が得られます。このままでもよいのですが,
(1)+(2)=(3)は2つの物体を1つのセットとみなして
連立方程式を立てたことに相当するので,
そのことがより伝わる表式に直してみましょう。
すなわち,\begin{eqnarray*}
m_{total}=m_{1}+m_{2}
\end{eqnarray*}を用いて,
\begin{eqnarray*}
m_{total}\cdot\frac{m_1a_1 + m_2a_2}{m_{total}}&=&F_{1,ex}+F_{2,ex}
\end{eqnarray*}
と書き表せるので,ここで重心Gの座標を

\begin{eqnarray*}
x_G=\frac{m_1x_1+m_1x_2}{m_{total}}
\end{eqnarray*}

で定めると,重心加速度\begin{eqnarray*}
a_G
\end{eqnarray*}

\begin{eqnarray*}
a_G=\frac{m_1a_1+m_1a_2}{m_{total}}
\end{eqnarray*}
となりますから(3)式は結局,
\begin{eqnarray*}
m_{total}a_G&=&F_{1,ex}+F_{2,ex}
\end{eqnarray*}
と書き換えられるわけです。

これは何を意味しているのでしょうか。
そうですね。重心の運動は,それぞれの物体にかかる外力が
あたかもすべて重心1点にかかっていると考えたときの
運動に他ならないわけです。

なるほど。特に外力が0の時は,重心加速度は0,
すなわち重心速度不変ということなのです!!
超重要

え,でも待って?
これって運動量保存と同じじゃない?と思った方,
素晴らしいです。
その通りです。
\begin{eqnarray*}
v_G&=&\frac{m_1v_1+m_1v_2}{m_{total}}=const.
\end{eqnarray*}
(const.はconstantの略で定数の意)なのですから,
\begin{eqnarray*}
{m_1v_1+m_1v_2}=const.
\end{eqnarray*}
と同じことですからね。(質量は勿論定数です!!)

運動量保存も実はこれと同様にして導かれるので,
重心速度一定か運動量保存かどちらの言葉を使っても構いません。

少し長くなってしまったので,
今回はここで区切りましょう。

続編は今回やったことをもとに
重心から見た相対速度の議論を深めます。
近日公開ということで。

質問はいつでも受け付けているので気軽にどうぞ。

さて,今月のブログは生きがいがテーマでしたが,
私のいまの生きがいは少しでも実力をつけて
将来社会により貢献できるようにすることですね。

施されたら施し返す。
恩返しです!(笑)

でも本当にこれからの社会を作っていくのは我々なので,
しっかりと精進してまいりましょう。

では,勉強頑張ってください。

横浜国立大学理工学部
担任助手1年 中村 祐貴